婦人科腹腔鏡下手術について

 当科においても婦人科良性腫瘍に対して腹腔鏡下手術を積極的に行っております。婦人科疾患の外科的手術、特に腹腔鏡下手術についてその基本的な考え、腹腔鏡下手術により治療可能な疾患、および、その方法について簡単に説明します。
 疾患の治療では体を傷つけない治療や体に負担が少ない治療が手術などによる体に負担のかかる療法よりもよいことは明らかです。体を傷つけない治療を非侵襲的治療、体に負担が少ない治療を低侵襲的治療、いっぽう、手術などによる体に負担のかかる療法を侵襲的治療といいます。
たとえば、ある疾病に対し生活習慣の改善、食事療法による治療(保存療法)を考え、次に、薬物療法が必要である場合には内服薬、注射薬による治療(侵襲はあるものの手術療法に対しては非侵襲的治療)を行うことが治療の基本です。しかし、これらの保存的療法で治療効果が少なく、早期に疾患の再燃をみる場合があります。また、これらの非侵襲的療法のみでは治療が不可能な場合もあり、侵襲的な療法を考えなければなりません。この際も、より低侵襲療法を選択することが術後の生活の質(QOL: quality of life)を高めるうえで重要です。開腹手術に比較して低侵襲性手術の腹腔鏡下手術が患者さまのQOLの向上に役立っています。

婦人科疾患では病巣が骨盤腔内にある場合がほとんどです。その骨盤腔内への到達方法には

(1)開腹手術:腹壁を切開し病巣を手術する。
(2)腹腔鏡下手術:内視鏡を用いた手術。
(3)膣式手術:視野、術野の制限があるものの膣腔より病巣を手術する。一般的に経腟手技は経膣分娩された方が対象となります。 
以の3種類があります。それぞれのアクセスルートには利点がある反面、手術手技が困難になる場合があります。そのため疾患の種類、程度、術者の技量によりアクセスルートが変わります。手術方法の決定に際し、疾患の種類、程度、および術者の技量の関連性より、第一に安全な手術手技が選択されます。その次にその手術により患者さまのメリットが最大であるかを考慮し、より低侵襲性であるアクセスルートを選択することが望まれます。上記のアクセスルートのうち最も低侵襲である腹腔鏡下手術には以下のようなメリットがあります。

【腹腔鏡下手術のメリット】

(1)  患者さまへの侵襲が少ない 具体的には ①術後疼痛が少ない 
                             ②入院期間が短い
                             ③早期の社会復帰が可能   
                             が挙げられます。
(2)術中出血量が少ない
(3)術後腹腔内癒着が少ない
(4)美容的に良好(5mm、10mmの傷)

腹腔鏡下手術は低侵襲性手術であり、患者さまのQOL向上のための手術方法です。自験例、多数の統計的報告、また、最近の腹腔鏡下手術の増加などより明白です。腹腔鏡下手術は臨床現場に導入され、社会診療報酬を受けるようになって16年が経過しました。機器の発達、手技の向上により安全かつ効率よく手術が遂行できるようになり、現在その技術はさらに進歩しております。
腹腔鏡下手術の可能な婦人科疾患、および腹腔鏡下手術のセットアップの方法、入院期間について概略を示します。

【腹腔鏡下手術の可能な婦人科疾患】
      
子宮筋腫、子宮腺筋症                
卵巣嚢腫、卵管水腫
子宮内膜症
子宮外妊娠
多嚢胞性卵巣症候群
腹腔内癒着
すなわち、悪性腫瘍を除くほとんどの骨盤腔内の婦人科疾患が対象となります。

【方法】

(1)  全身麻酔
(2)  開脚医あるいは載石位の体位をとる
(3)  子宮把持機器の装着
(4)  臍上に約1cmの孔をあけ内子鏡挿入トロカールの装着
(5)  下腹部に0.5cmの孔(2孔か3孔)をあけ、鉗子挿入のトロカールの装着
(6)  腹腔鏡内の観察およびそれぞれの疾患に対する手術 
(7)  腹壁孔の閉鎖  
          
【入院期間】7-9日間(手術前日入院、手術当日、術後5-7日目退院)

当科では低侵襲性治療をめざし、悪性腫瘍以外のほとんどの婦人科疾患で腹腔鏡下手術を施行しています。

                                                 産婦人科部長 木花 敏雅